2012年3月20日火曜日
五、 ヒルティの感銘深いエピソード P.15
ヒルティの良き友人であったケラー師の証言
「私が最後に-彼の死ぬほぼ半年前-彼を訪れた時、彼はひどいロイマチスに悩んでいました。辞去する時、私は彼の手をかたく握って〈主があなたのご病気を和らげてくださるようお祈りいたします。〉と申し上げると、彼はほっそりとした指で私の手を取り、真剣な面持ちで言われました。
『それはいけません!あなたは私どもの主があなたのお祈りを聞いて特別のお恵みをたれて、私からこの苦しみを取り上げて下さると思っていらっしゃるようですが、それはお断り申し上げなければなりません。十日間のロイマチスの苦痛は、私の内なる人間のために私が聞く十の説教よりも、或いは私が読む全ての書物よりも、ずっと薬になるのです。どうぞ、私の苦痛を気になさらないで下さい。』と。私たち神学者は、この法律家から教えられることがたくさんあります。」
(A.シュトゥッキ 国松孝二・伊藤利雄訳「ヒルティ伝」108頁 白水社2008年)
このエピソードの中でヒルティは自身の次の言葉を身をもって実証したものと言えましょう。
『苦悩の本来の目的は、ただ苦悩によってのみわれわれは神の近くにいることに慣れ、常に神のそば近くにいることを感じることができるという点にある。』
(「幸Ⅱ」 329-330頁)
『神と共にあって苦しむことは、神なしに生き、まして神無しに苦しむよりも、つねにまさった運命であるという思いをたえずはっきりさせておかねばならない。』 (「幸Ⅲ」 139頁)
『辛い試練や意気消沈はいつも新しい、より大きな浄福と神の力が加えられるための入り口である』 (「夜Ⅰ」十一月六日)
(次の章へ続きます)
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